声明について 高田短期大学学長・仏教文化研究センター長 栗原 廣海
「声明」とは、仏教儀式で用いられる声楽の総称で、経文などを、昇降・屈曲の節をつけて仏前で諷誦することを言います。
本来は古代インドの五種類の学問分野をあらわす「五明」(声明・工巧明・医方明・因明・内明)の一つで、文法学や言語学、訓詁に関する学問を意味し、仏教声楽を意味する語としては「梵唄」「梵讃」などが用いられていましたが、中世の初め頃から「声明」が仏教声楽を意味するようになったと言われています。
古くは、奈良の東大寺大仏開眼法会において種々の音楽が演奏され、そのとき声明も行われたと言われていますが、現在行われている声明はほぼ天台声明と真言声明の流れで、発達した音楽理論をもっています。
これらは鎌倉仏教の各宗派に影響を及ぼしただけでなく、平曲・謡曲・民謡・浄瑠璃など、単旋律の音曲をもつ日本の伝統音楽の源流ともなっています。「高田声明」も天台声明の流れを汲むものです。