報恩講式について 法嗣 常磐井 慈祥
「お式文」と言えば報恩講、報恩講と言えば「お式文」と言われるように両者は決して切り離しては考えられません。「お式文」は正式に「報恩講式」と呼ばれます。
それでは、講式とはどういう意味でしょう。講式とは本来、講(法会・集会)を行うに際しての式次第のことです。これが後に儀式作法を定めたものへと性格が変わって、盛んに作られるようになりました。その代表的なものの一つが本願寺第三世覚如の作になる「報恩講式」なのです。
「報恩講式」は親鸞聖人のご正忌に行われる報恩の集会である報恩講に際して読み上げられる表白文を中心に、勤行作法などを付け加えた内容になっています。最初の表白に引き続き、初段、二段、三段の三つに分けて親鸞聖人の徳を讃嘆してゆきます。高田派の「報恩講式」は拝読の複雑かつ独特な節回しで、他派とは著しくその趣を異にしています。
しんしんと冷え込む伊勢路の冬の夜、御影堂の張りつめた空気の中に響きわたる「お式文」拝読の声は高田派の誇るべき文化遺産なのです。